桜と水面と雑木林を借景に、窓の外に四季がある家
20代の若いご夫婦が家づくりに求めたのは、性能の確かさだけではなかった。永く快適に暮らせること、そのうえで日々の気配がやわらかく整う“穏やかさ”を住まいにまとわせたい。そんな想いから、暮らしの土台を一つずつ確かめるように計画が進んでいった。
土地探しではいくつか候補があったが、最後に背中を押したのは景色の良さだった。選んだのは、桜の気配が寄り添う土地。南には雑木林、西には桜の生えた公園、東にはため池が広がり、北側以外は借景に恵まれた場所。窓の向こうに季節があり、風や光の移ろいがそのまま暮らしの背景になる――そんな土地の魅力が、静かに心を掴んだ。
「ここに決めた」その瞬間から、ご夫婦の中で2階リビングという選択肢が立ち上がった。1階完結の便利さよりも、この土地の景色を日常の中心に据えること。高い位置から眺める緑や桜、ため池の水面が、慌ただしい日々をふっと緩めてくれる。土地を活かして、毎日を穏やかに暮らしたいという願いが、間取りの方向を定めていった。
住まいのつくり方にも、ご夫婦の価値観が表れている。直して使い続けられることを大切にし、造作キッチンをはじめ造作の要素を多く採用。使い込むほどに手になじみ、必要があれば整え直してまた暮らす。暮らしを消費するのではなく、手をかけながら育てていく住まいが形になった。
そして引渡しを目前に、妊娠が分かったという嬉しい知らせが届く。新しい家で始まる新生活に、新しい命の気配がそっと重なった。借景の美しいこの住まいで、家族の時間がゆっくりと増えていく未来が、やさしく思い描かれる。



















